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BlackAsh News!! 新着順 - 3月 21〜 -
2006年 3月 26日 (日)

ボクシング:長谷川、2度目の防衛成功 WBCバンタム級 毎日新聞 [08:02] 
  長谷川の強さが際立った試合だった。圧倒的な手数とスピード、ボディワークをもってして、バンタム級前世界王者、14度の防衛を誇ったタイの英雄ウィラポンを見事に退けたと言っていいだろう。途中で頭を付けての打ち合いに付き合ってポイントは落としたものの、気合を入れ直した第9ラウンド開始直後、ウィラポンの不用意な右ストレートに合わせた、何千回も重ねた練習で身体に染み付いていただろう右フック一発で、歴戦の勇は前のめりに倒れた。足は完全に震え、目は泳ぎ、二度とキャンバスを踏みしめることはなかった。久しぶりに現れた長期政権が期待できそうな日本人チャンピオンだと思う。WBCバンタム級ランキング1位のウィラポンの下には、これは間違いなく次期王者だ、と見られるような強い選手はいない。あと2,3度防衛を重ねて経験を積めば名王者の誕生を予感させる、長谷川の伸びしろに期待が出来る試合だった。

この試合を、ある種の感慨を持って見ていた人は多いかもしれない。ウィラポン・ナコンルアンプロモーション。かつて日本ボクシング界を席巻し、今なおその名前に感動を憶える人も多い辰吉丈一郎を圧倒してタイトルを奪取、必死の再起を誓った辰吉とのリマッチでは虐殺と言っていいほどの力の差を見せつけて完勝、辰吉の跡を継ぐように挑戦した西岡に対しても、苦戦はしながらも3度退け、4度目で完勝。辰吉と西岡という二人のボクサーが血を吐きつつ重ねた挑戦を全て跳ね返し、それ以外の挑戦も合わせて14度全て跳ね返した、聳え立つ壁だった。そのいつも穏やかな表情は、いかに苦境に陥ろうとも、はたまた苦難を乗り越えて見事防衛を果たしても全く変わることはなく、ついた異名は「デスマスク」。いついかなる時も前進を止めないプレッシャーから放たれる彼の右ストレートは、幾多の挑戦者の希望を打ち砕いてきた。
その壁が長谷川の若さによって崩れ、そして今日、万事を尽くして臨んだはずの再戦で力の差を見せ付けられた。あのウィラポン時代は、辰吉が西岡が渇望した、ウィラポンの腰に巻かれたWBCバンタム級チャンピオンベルトは、より若い世代のものとなったのだ。

確かに、ウィラポンは衰えていた。そもそもが37歳でランキング1位に上り詰めること自体が凄まじいし、今日見たその力量もランキング1位にふさわしいものを備えていた。それでも、辰吉を葬ったあの破壊力が、全盛期の前進を支えた足が、気づいた瞬間目の前に迫っているノーモーションの右ストレートが、今日は黄昏にかすんで消えていた。ボディを狙うストレートの戻りはいつにも増して遅く、容易に長谷川の戻り際を狙った打ち下ろしを食っていた。ムエタイ流の固いガードをあざ笑うかのように、長谷川の左アッパーから左フックのダブルが、ウィラポンの脳を何度も揺らした。1〜6ラウンドまで長谷川にいいように取られたその姿は、かつて辰吉を失神させ、西岡を後退させた時のものではなかった。歳月は、辰吉がそれに飲み込まれていったのと同じく、ウィラポンも飲み込んだ。

第4ラウンドか第5ラウンドのインターバルだったか、私は彼の「デスマスク」が揺らぐのを見たような気がした。一回りも若い王者に以前の対戦より差をつけられ、もはや完全に超えられたことを悟り、それでも戦う場所に向かわなければならないボクサーの決意が見えたような気がした。彼は全てを十分に理解していたような気がした。第7ラウンドと第8ラウンド、ウィラポンは意地を見せ、頭を付けての打ち合いで盛り返す。この間合いはもともとウィラポン有利、長谷川が付き合ったのが間違いであり、ポイントも間違いなくウィラポンが取った。けれど、ダメージはそれほど与えられなかった。全盛期のウィラポンであったら間違いなく相手に深手を負わせていたであろう状況だったが、そうはならなかった。全ては、終幕へと進んでいった。第9ラウンド、「デスマスク」は浮かぶはずのない焦りの貌を描き、長谷川の誘いの左に合わせて返すべく放った必殺のカウンター右ストレートは、まるでボクシングを始めて1年も経たない選手のそれのように、挙動、スピード、タイミング、ステップ、残すべき左ガード、その全てが凡庸だった。

私はしばしば、彼の戦う姿を見ると仏像を想起するのだ。仏教国タイのイメージがあるのだろうが、彼の浮かべる微笑にも似た表情は、仏像が印を組み佇む雰囲気を醸し出しているように見える。決して後退せずにプレッシャーを与え続けるファイトスタイルは、名工の手による仏像の前に立って見上げた時の、何とも言えぬ圧力を思い出させる。実際は結構老獪で、いろいろあの手この手と反則気味の技も繰り出してはいるのであるが、どうも彼の人格ゆえだろうか、個人的に責める気にはなれない。ウィラポンは、どこのリングでも相手を讃えることを忘れず、無用な試合前の挑発もなく、試合後の無駄なパフォーマンスも弁解もなく、ただ自らの意思により自らのすべきことを実行していた。正直に言おう。辰吉のスタイルが余り好きではない私は、ウィラポンの圧倒的な力強さが辰吉を跳ね返したことに快哉を憶えた。同じく余り好きではない、スピードスターと言われつつもスタイルとしてそれをあと一歩生かせず逃げに回りがちな西岡を4度目で退けた時は、大きく首肯したものだった。寡黙にして、ただ実行するその強さ。溜めた力をしっかりとその時に発揮する強さ。何度もあった形勢不利な時も諦めずに前に進む強さ。彼はかつてインタビューにこう答えた。「ボクシングは相手を打ちのめす競技ではありません。強さを競う競技です」。それは、名王者と呼ばれるにふさわしい強さに裏打ちされた言葉だった。

長谷川のボクシングは強かった。苛烈なハンドスピードと軽快なボディワークはしばしばウィラポンの足を止め、これならば全盛期ウィラポンにももしかしたら抗し得るかも、と思わせるような見事なボクシングだった。そして、だからこそそれ以上に、25歳で上り坂、これから満天に輝こうとしている太陽と、37歳の下り坂、地平線に沈もうとしている落日との間にある勢いの差が見て取れた。ひときわ大きな音を立てて鮮烈に決まった長谷川の右フック。ウィラポンが、絶対王者があんな倒れ方をするとは、思ってもみなかった。辰吉を西岡を完璧に跳ね返したあの王者が、完全に効かされて前のめりに、立ち上がろうとする足は空しく震え、揺れた脳は自らが陥ったその事態を制御することができず、ただ身体だけが自らのすべきことをしようともがく。全てが終わった瞬間を見た私は、王者を讃えるべく拍手するほかなかった。拍手の前にひとつだけため息をついたことくらいは、許してほしかった。

ウィラポン、ひとまずはお疲れさま。続けるかどうかについて私の思うところなんてここで書いてもしょうがない。あなたは素晴らしいチャンピオンだった。それこそ今日、敵地である日本であるにもかかわらずウィラポン・コールが会場に巻き起こるほどに。ボクシングとは、強さとはこういうものだ、と、例えばあの某亀田なる一家を使った下らない見世物とは違う、強い選手のひとつのあり方を体現し続けてきたあなたに、私は最大の賛辞と敬意を捧げる。

































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