| 『米メディアは1月26日、“塩分・脂肪・糖分過多”が問題視される米国の学校給食を、果物や野菜など食物繊維の多い食品に切り替える動きが始まっている』 日本の給食の多彩さは世界に喧伝されて久しいですが、アメリカでもそれを取り入れる動きが活発になってきたとのこと。私は、皆さまのご想像のとおり子供のころからまあよく食べておりまして、クラスメイトが休んだ時に必ず開催されていたソフト麺、プリン、冷凍みかんのジャンケンには毎回参加しておりました。ただいかんせんジャンケンが弱いんですよね私… いつも苦杯を舐めておりまして、その苦杯が脂肪となり、四十路前なのに早くも血糖値の数値に悩む今の私を形作ったのではないかと疑っています。
まあそんなことはどうでもいいのですが、いや私個人の生命という観点からすれば全くもってよくないのですが、アメリカ人の約6割が肥満というのは夙に知られたところです。それは子供についても同様で、とにかくジャンク・フードを思う存分食いまくる子供が多い模様。このところジェイミー・オリバー というイギリスの料理人が、アメリカに乗り込んで学校給食を変えていこうという活動を地道に続けているということですが、やはり予算の都合でしょうか、それとも異常なほど強い力を持つアメリカ食品業界の力でしょうか、いまだにアメリカの学校の給食は野菜が少なく、というか日本人の観点から見て「野菜」というものはごくわずかで、加えてそういう給食が出たとしても、別途備え付けのコーラとポテチが食べ放題と聞いています。
『ヒューストンの一部の学校では、すでに給食の主食をマカロニやパン、ピザなどを全粒穀物製品に替え、緑黄色野菜を定期的に出す試みが進められている。米農業省の調査によると、一部ではチーズピザ、缶詰めのパイナップル、ポテトやチョコレート牛乳を出していた学校が、全麦のピザ、サツマイモ、リンゴジャムや低脂肪乳に変えた』 この記事からすると、従来のアメリカの学校給食はどうやら炭水化物が多いようですね。これも夙に知られていることですが、日本で育った我々からすればまさに文化の違いとして受け止めざるを得ないことに、彼らにとってジャガイモは野菜という分類であり、コメは野菜という分類であり、さらにはトマトペーストは野菜という分類であり、従ってトマトペーストを大さじ2杯以上使ったピザは「野菜をふんだんに使ったスペシャルなメニュー」であるという認識だそうです。 それを、徐々にではありますが日本人の認識でいうところの「野菜」を出していくという試み、上でも述べましたようにアメリカでは穀物メジャーを代表とする食品業界の力が非常に強いため、なかなかうまく進まないかもしれませんが、それでもそういう1歩を踏み出していくアメリカに、心からの応援を送る次第です。やはり子供たちはすべからく守られるべき。もしかしたら今後アメリカ人はすっかり痩せ細ってしまい、今テレビで流れている「BIG AMERICA」の字幕とともに某ハンバーガーにかぶりつくCMも、なくなってしまうかもしれません…?
いや、それはおそらく、少なくともこれから100年のうちには解決しないことでしょう。アメリカの肥満の大きな原因は、安価なジャンクフードにあり、つまり富の偏在による貧困家庭がそのようなジャンクフードを常態として食すほかないことから生じているから。 仕事柄、アメリカのハイソな人たちにたくさん会ってきましたが、概して皆さまジムに通い、ヘルシーなサラダをしっかり食べてほっそりしておりまして、翻って私自らの巨体に恥じ入り、穴があったら入りたいけれど入るサイズの穴がないという日常です。あと穴があったら入れたいんですが未だ日本の科学力ではモニタに映るキャラクターの局部の位置に穴が空かないので日々涙しているという日常です。ここを読み返して余りに余りなので穴があったら入りたいです。
ああ、でもハイソな人たちもあれですね、やっぱりアメリカンな味覚をお持ちでしたね。以前書いたかもしれませんが、ある時会社で大きなプロジェクトが無事にクローズしまして、まあとりあえず「今日は社内でささやかながら慰労会を開こう」ということになり、外国人特にアメリカ人の皆さまのリクエストにより、出前の寿司を2,3桶(50カンくらい×2 or 3)くらい頼もうということになったんです。で、寿司も並び、ワイン(私は強硬に日本酒を主張しましたが、民主主義の論理により押し切られました。)も何本も空きまして宴もたけなわ、というところで、外国人の皆さまから文句が出まして。曰く「醤油がない」と。 皆さま寿司の出前を頼まれたことがあればご存じだと思うのですが、寿司の出前を取ると小さいパックの醤油が無駄に大量についてきますよね。50カンほどの桶1つにつき醤油は最低でも15〜20袋はありますよね。明らかにこんな量使わないだろ、というレベルですよね。まあそりゃ寿司屋としても足りないなんてクレームが来ないように十分な余裕を持って醤油を用意しているのですが、それが全部なくなったと。正直目を疑いましたね。どんだけ寿司に醤油つけてるんだと。きみらハイソで上品な人たちなんじゃないのかと。醤油皿を見ると酢飯がぼろぼろ溜まってるんですよ。まあそりゃ寿司はネタに醤油を付けるものだとかそんなことは言いませんよ。好みもあるでしょうよ。でもあの量の醤油を使い切るってどういうことだよ。 なおコンビニに醤油を買いに行ったのは私でした。悲しかった。生タコの味わいがわかるまでこいつらを日本から帰さないと心に決めた瞬間です。
そしてその後、リベンジを密かに期し、機会を作って同僚のアメリカ人と一緒に寿司屋に行きました。魚の旨みを存分に味わってもらうために回らない寿司屋でした。そこで彼は「ガリ」を一缶全部空けましてね。一缶ですよ。寿司屋の板場にはたいてい缶の中にガリがごっそり入っているのですが、「Delicious!」とか目を見張ってボリボリ一缶全部食いまくったんですよ。何がでりーしゃす! だよ。ヘルシーとかどの口が言うんだよそんなに食ったら血圧どうなるんだよ。つか魚食えよちくしょう。あとで私は店長に平謝り、そしてそれは、私がアメリカ人に生タコの味わいを教えることを諦めた瞬間でした。
そんな偏ったアメリカ人の例を見てきた私は、しかしながら、アメリカ人はいつまでも、大量に食いまくって、それこそサンドイッチをひたすら食いながら10時間くらいぶっ続けで書類をline by lineで検討するクソったれな会議なんてへっちゃらで、「ダイジョウブダイエットコークはヘルシーだからHAHAHA」とかね、「ヴェジタブル食べるといいよ。オニオンリングとかヘルシー!」とかね、いや油で揚げたオニオンリングがヘルシーと実際に私に対してガチで言い切られてちょっとどうしようと思いながらもね、そんなことを言いながら「Big America」を体現していてほしいな、とも思ってしまうのです。かつて日本が憧れ、追い付きそして追い越そうと一心不乱にその背中を見続けた国、アメリカ。私は残念ながらアメリカに行ったことがなく、特段アメリカという国に思い入れがあるわけではありません。上に挙げたような私個人の特殊な体験だけでは何も判断することはできないでしょう。そしてアメリカという国の功罪については、それこそ色々な意見があるでしょう。けれどそれでも、彼らの背中が小さくなるのは、少しだけ淋しい気もするのです。
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